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【山下智久】アルバム「UNLEASHED」レビュー

山下智久
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オリジナルアルバムとしては、前作「YOU」(2014年)から4年ぶりのリリース。レーベルをワーナーミュージック・ジャパンからSME Recordsに移し、その第一弾の作品となるのが、この「UNLEASHED」だ。

前作からの4年の間、2016年にベストアルバムのリリース、2017年には亀梨和也とのユニット「亀と山P」でシングルを発売するなど、音楽活動が無いわけではなかった。

だが、主演を務め、興行収入が2018年トップの92億円を記録した「劇場版 コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」に代表されるように、近年は俳優業の印象が強かったように思う。

久しぶりのオリジナルアルバムは、待ちに待った音楽活動の始動の知らせだったというわけだ。

音楽活動始動にあたり、山下はこんなコメントを残している。

音楽活動を本格始動するまで、色んな世界で色んな音楽に出会い、触れてきました。

俳優業でも多くの事をインプットさせていただきました。

これを良い音楽としてアウトプットできたらという思いを込め、楽曲制作にも参加し、アルバム制作に取り組んでいます。

今の僕が、素直に良いと思える音楽を解き放ち、女性にも男性にもたくさんの人に届けたいアルバムです。

“今の僕が、素直に良いと思える音楽を解き放ち”、ここにアルバムタイトルを“解き放たれる”という意味の「UNLEASHED」にした想いがにじみ出ている。

今回は通常盤に収録されている12曲をレビューする。

 

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総評

アルバム全体から、山下の表現者としての力強さとしなやかさが伝わってくる。

ほぼ全曲の作詞を手がけ、その歌詞に込められているのは、縛られているものから自らを解放すること、自分らしく自由であることへのメッセージだ。

持ち味のフラットでプレーンな声のボーカルワークは表現力を増し、音に身を任せながら曲の世界観に適した歌声を届けている。

全編英語詞の楽曲から始まり、最新のダンスミュージックのテイストを取り入れたクールなサウンドを経て、ミディアムバラードや甘酸っぱいラブソングへと行き着く流れは、ひとりの“アーティスト”でありジャニーズ事務所所属の“アイドル”であることをごく自然に理解させる絶妙さがあった。

ソロで音楽活動をすることの難しさというのは当然あるだろう。ジャニーズ内を見ても、ソロで継続して楽曲をリリースしているのは山下と中山優馬くらいだ(ただし、中山は2016年以降はリリース無し)。

だからこそ、33歳の彼が新しいレーベルで一歩を踏み出し解き放ったこのアルバムは、彼のキャリアにとっても大きな意味を持つ作品となったに違いない。

 

楽曲レビュー

UnleAsHed

Lyrics: Tomohisa Yamashita / WAKE

Music: Atsushi Shimada / Tommy Clint

Arranged by Atsushi Shimada / da beatleggz

Mixed by D.O.I

 

実質のOverture。自分を解き放て、変えられないものはない、と静かに立ち上がる音の中で語りかける。

“we never coming off the throne” というフレーズをさらっと言えるのはさすが山下智久だ。絶対に王座を降りる気がないんだぜ…。すごい。

 

You Make Me

Lyrics: Tomohisa Yamashita / WAKE

Music: Andreas Ohrn / Jimmy Claeson

Arranged by Jimmy Claeson / Andreas Ohrn

Mixed by Koichi Harada

 

アコースティックギターが切ないAメロ、ピアノで一気に情感が高まるBメロから強めのベースとギターのカッティングへの流れは、控えめなトロピカルテイストを帯びた構成になっている。

抑えめのテンポと必要な数に絞られている音色の中で、ほのかに浮かび上がるように存在するのが英語詞を歌う山下の声だ。

感情を狂わせるほど夢中にさせられる相手への想いを描写している歌詞を、あくまで物語をなぞるようなナチュラルさで歌う。

肩に力の入っていないラフさがありながら、どこかさみしさをも漂わせているところに、彼が年齢を重ねてきた足跡を見ているようだ。

 

Paraíso

Written by Tomohisa Yamashita / WAKE

Mixed by D.O.I

 

寂しさをたたえながら鳴るアコギが印象的。その後サビでガツンとベースとメロディを展開させる高低差もメリハリがついていて良い。

歌詞は多くを語るタイプのものではないが、覚悟を決めた出航前夜の心境が丁寧に描かれている。

 

Right Moves

Lyrics: Tomohisa Yamashita / WAKE

Music: Rasmus Viberg, Oliver Forsmark

Arranged by Oliver Forsmark

Mixed by Teturo Takeuchi

 

ファンクなダンスチューンに背中を預けるように声を乗せる山下のボーカルが気持ちいい。

働く人々が金曜夜に飛び立つパーティーソングでありながら、日常の気だるさのようなものも感じられるのがover 30のこなれ感が出ていてたまらない。

“karaoke prince in the house” ってフレーズがすごく好き。推しがカラオケで歌ってる映像や画像にキスマイBUSAIKU風に差し込みたい…。カラオケプリンス・イン・ザ・ハウス

 

LOOK AT ME, LOOK AT ME

Written by STY

All Instruments and Programing by STY

Mixed by D.O.I

 

三代目J Soul Brothers「R.Y.U.S.E.I.」で知られるSTYがプロデュース。

00年代のTimbalandを彷彿とさせるR&Bとヒップホップを融合したトラックに、2018年っぽい音やノイズが重なる意欲作であり、前半の山場となる曲である。

歌詞に“unleash”が何度も繰り返し出てくる。heart and soul, your monster, everything… 全てから解き放たれて本当の自分と出会うんだというメッセージは、まさにこのアルバムの根幹に触れるものだ。

露悪的にならない程度に核心をついていて、なおかつ聴くほうが自分のことにも山下のことにも重ねて取ることができるバランスが絶妙。

 

秒針

Lyrics: Tomohisa Yamashita

Music: Tomohisa Yamashita / UTA

Arranged by UTA for TinyVoice, Production

Mixed by Koichi Harada

 

静かなトロピカルハウス。山下が音を派手にガンガン鳴らす曲よりこの手の“静”なサウンドがよく似合うのは、彼の声質によるものだろうか。

幾度も韻を踏むリリックが切なさを誘う。

 

Dancer

Lyrics: Tomohisa Yamashita / Kazuya Kamenashi / KODAI IWATSUBO

Music: Jonas Mengler / Johannes Weissschnur / KODAI IWATSUBO

Arranged by Jonas Mengler / Johannes Weissschnur

Mixed by Koichi Harada

 

亀梨和也を迎え共作詞したミディアムバラード。ここまでの曲とは雰囲気が異なるからか、より壮大に聴こえてくる。

ピアノに少しぼやけたエフェクトがかけられているのが、過去を思い返す歌詞と相まってノスタルジックだ。

タイトル「Dancer」にあるように、「踊る」というワードが出てくるのだが、それと共に使われるフレーズで時間の経過が表現されている。1番“砂の上”で夏を、2番“雪の上”で冬を、落ちサビ前のDメロ“少し大人びた君”でさらに時間と季節が経っていることを思わせる。

これ以外の箇所も、言葉のチョイスが曲にすごくハマっていて、世界観というよりはワードセンスの勝利という感じか。

 

“H”

Lyrics: Tomohisa Yamashita / H.U.B.

Music: Ali Balboa / Lole Starlight

Arranged by Ali Balboa / Singo Kubota (Jazzin’park)

Mixed by Koichi Harada

 

ファルセットを巧みに使い、色気を存分に醸し出すセクシーなナンバー。

“H”と書いて「アッシュ」と読む。Hのフランス語読みがアッシュなので、そこから引っ張ってきているのだろうか。次の曲の「StrAwbErry」に “灰(high)になる” というフレーズがあるのだが、わざわざこの表記にしているのと灰は英語でash(アッシュ)であるため、ある場面を「“H”」は女性目線で、「StrAwbErry」は男性目線で描いて対になるようにしているのではないか、というのが私の解釈である。

Bメロを艶かしくタメて歌うのが良い意味でとってもけしからんやつ。さすが山下智久…。

 

StrAwbErry

Lyrics: Tomohisa Yamashita / Komei Kobayashi

Music: Willie Weeks / Nashe Murembeni / Tinashe Garande

Arranged by Willie Weeks

Mixed by Ryozo Nakamura

 

骨太なバンドサウンドと控えめに乗るシンセの取り合わせがこれまたセクシーな一曲。

文字で見ると露骨な歌詞も、コーラスワークが凝っているので聴いてる分には全然気にならないのが不思議だ。

2サビ終わりの “乱れ咲く 慕情に 滲む朧月” がとても詩的。5・7・5になっているのは狙ったのか偶然なのか。

 

AI

Lyrics: Tomohisa Yamashita / WAKE

Music: P3AK / Andy Love

Arranged by UTA for TinyVoice, Production

Mixed by Teturo Takeuchi

 

アルバム終盤で一気にブチ上げる、派手でメロディアスなプログレッシブハウスのダンスナンバー。

私はキスマイのオタクなのでこういうわかりやすく乗れる四つ打ちのサウンドが大好きなんだよ…。キスマイのオタクは絶対好きだと思う!(決めつけるな)

このアルバムで一曲選べと言われたら絶対にこの「AI」をピックアップするってくらい好き。

寂しげだったり静かだったり大人な感じで10曲目まで来て、ここで完璧な「陽」を投下してくるの最高か。まぶしすぎるほどまっすぐに突き進んでいく歌詞がサウンドとシナジーを起こしていて、永遠にこの時間が終わらなければいいのに…と思わせる。

 

With you

Lyrics: Tomohisa Yamashita

Music: Samuel Waermo / MiNE / Atsushi Shimada

Arranged by Atsushi Shimada / Strings Arr: Natsumi Tabuchi

Mixed by Koichi Harada

 

バンドサウンドにピアノとストリングスが加わった王道のシンフォニックロックナンバー。

サビで張り上げるように歌うのもグッとくるし、“君が思うより 君は特別さ” と山下が歌うことの尊さを噛み締めている。

彼のフラットでプレーンな声というのは、ポップスとかだと時に無機質に感じられることもあるが、それがかえって聴いている方の感情を揺さぶってくる好例を示す曲だ。

 

あの日の香り

Lyrics: Tomohisa Yamashita

Music: Takuya Watanabe

Mixed by Koichi Harada

通常盤のみ収録

 

アコースティックギターに乗せて、学生時代の恋を思い出しながら歌う一曲。

一人称は1番が「私」、2番は「僕」が出てくる。お互い気持ちを言い出せずに両想いにはなれなかったけど、相手の幸せを願っているというストーリーがとてもアイドル的である。

キスマイの「Because I Love You」(2018年)も、学生時代の幼すぎた恋に思いを馳せる曲なのだが、30過ぎると昔の恋愛について良い思い出として回顧したくなるものなのだろうか??この傾向は興味深いですね…

 

おわりに

4年ぶりの音楽活動始動にふさわしく、山下の音楽への意欲とエネルギーを解き放ったアルバム「UNLEASHED」。

このアルバムを引っさげたライブツアーも成功を収め、2/13にはシングルのリリースも決定している。

今後の音楽活動がどう展開していくか、とても楽しみだ。

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