治安悪いサウンドが大好きなのでFOLLOWも例外なく好きですね。あんなゴリゴリな音なのに、歌詞は星屑のスパンコールの系統でズルいな〜と常々思ってます。いつかFOLLOWの解説も書きますね…! #peing #質問箱 https://t.co/FbvhNh5IaR
— みやま (@miyamachronicle) October 21, 2018
質問を頂いてからいつのまにか2ヶ月以上経過。ずいぶんお待たせしてしまった…。
今回はKis-My-Ft2の「FOLLOW」について、楽曲解説という名の超個人的解釈を述べていきたい。
楽曲データ
作詞:Ryohei Yamamoto
作曲:SETEVEN LEE・Drew Ryan Scott
編曲:CHOKKAKU
- 4thアルバム「KIS-MY-WORLD」(2015年)収録
試聴ページ → MUSIC | Kis-My-Ft2 Official Website
作詞のRyohei Yamamoto氏はキスマイ楽曲では「Gravity」「Let it BURN!」「Flamingo」「One Kiss」「蜃気楼」の歌詞を担当。
作曲のSETEVEN LEE氏とDrew Ryan Scott氏の組み合わせでは、「Crystal Sky」「Flamingo」「r.a.c.e」「xLunaSx(藤ヶ谷ソロ)」「Clap-A-Holics(玉森ソロ)」など他多数提供楽曲あり。
編曲のCHOKKAKU氏は、「S.O.KISS」「運命Girl」「キミとのキセキ」「赤い果実」「REAL ME(藤ヶ谷・北山ユニット曲)」等キスマイ楽曲ではおなじみの編曲者である。
ハードでドラマチックなサウンド
キスマイのお家芸とも言えるギラギラで重々しいダンスナンバー。とは言いつつも、ただギラギラオラオラというわけではなく、緩急を巧みに操って物語性を強める構成になっている。
一音目からこの曲の世界がただごとではないのを予感させるイントロ。重めのシンセがLowからMiddleに戻ってくるところから始まり、後から重なるストリングスのバッキングやスケールを駆け下りるギターが、これから一体何が始まるのかと聴き手を身構えさせる。
Aメロ前半ではオクターブ上のコーラスが、後半ではオクターブ下のコーラスがそれぞれ入るのだが、この時点ですでに構成の巧さを見せつけられた。
1番も2番も後半に音も歌詞も重さを出しており、より不穏な雰囲気をまとわせる効果を出している。
Bメロで音を一旦落として、サビで一気に鳴らす展開がなんと気持ちいいことか。一気にすべての照明が灯されたような音の上下への広がりが印象的だ。
サビにおいては重厚なベースラインと、美しく鳴る裏メロのコントラストがこの曲を一層ドラマチックに仕立て上げる。
サビだけ切り取る分にはそこまですごいことをやってるとか仕掛けがあるというわけではないのだが、全体通した上でやはりサビから強さと刹那の輝きをものすごく感じるので、前後の緻密な構成が功を奏しているのだろう。
ヘビーなサウンドで進む間奏の終わりを三連のリズムでトーンダウンさせてから入るBメロ、そしてリバーブの効いたピアノの落ちサビへと続く流れも見事だ。
FOLLOWがただのギラギラな曲に終わらないのは、この約30秒の流れが素晴らしいからに他ならない。
ラスサビが終わった後も、アウトロで畳み掛けるようにBメロを持ってくるあたりがトリッキーかつ美しい。
キスマイ版「星屑のスパンコール」説
次に歌詞を見ていこう。一見オラオラなサウンドにオラオラな歌詞のようにも思えるが、実は「ステージに立つ自分」と「客席にいる君」を描いた、“キスマイ版「星屑のスパンコール」説”を提唱したい。
「星屑のスパンコール」は、少年隊の1stアルバム「翔 SHONENTAI」に収録されている曲で、「リハーサルを待つ間 客席の暗闇」「客席の片隅に君をみつけた」と歌詞にあるように、「アイドルの僕」と「ファンである君」を描いた曲である。
その歌詞のメッセージ性から、これまで多くのジャニーズの後輩たちがザ少年倶楽部などで歌ってきた。(もちろんキスマイが歌っている回も存在する。)
では、なぜ「FOLLOW」がキスマイ版「星屑のスパンコール」であると言えるのか。
まずAメロ。1番の「唸りあげたスピーカー」「輪郭帯びたベースライン」は、コンサート会場の大音量と体に響く重低音を想像させる。
2番の「幻と踊れば訪れるカーテンコール」。コンサートだと厳密に言えばアンコールであるが、音数的にも言葉の響き的にもカーテンコールのほうがしっくり来る。(ちなみに星屑のスパンコールには「もう一度アンコール」という歌詞がある。)
また、「耳鳴り誘うブラックアウト」は、開演時に客電が落ちてファンが歓声をあげる様子にも取れることから、場面設定がステージであるとわかる。
「FOLLOW」では、一人称は「I」「ME」「We」、二人称は「YOU(U)」「君」が出てくる。
「星屑のスパンコール」では明確に「僕」と「君」の1 :1の関係であるのに対し、「FOLLOW」は便宜上単数形を使っているが「キスマイ(及びそれに属している自分)」と「この空間にいる不特定多数」くらいの曖昧さだ。
一箇所だけ「目前のライトに 君を探してる」というフレーズがあるが、ここで言う「君」は特定の一人というわけではなく、「自分を推しているファンの誰か」くらいのくくりだろう。
基本的に一人称側の視点での体感で綴られているが、「ついておいでよ COME with ME その雑音掻き分けて Go for the GLOW Now follow…FOLLOW…」の部分だけは、二人称側の動きを描いている。
“雑音”をどう捉えるかで解釈は変わってきそうだが、一人称側(キスマイ及びそれに属している特定の一人)を応援する上で生じる周りからのノイズのことだとすると、それを掻き分けて輝く僕らについておいでよと手を伸ばしてくれるのめちゃくちゃ愛だと思いませんか…?すっごいなこの歌詞。
また、“輝く”という表現のゴールを“GLOW”に置いているのもすごくいい。
“glow”は内面から発光し、“shine”は表面がきらきらするというようなニュアンスがある。
例えて言うと、玉森裕太の肌が白く発光しているのが“glow”で、衣装が光にあたってきらきらするのは“shine”というわけ。
表面的な輝きよりさらに内側からにじみ出る輝き(肌の白さに限らず、より人間的な側面)を目指していく、というコンセプトが“Burning Light”や“残光”に感じる刹那の光と相反してエモーショナルな気持ちにさせる。
完全に同じ内容というわけではないが、アイドルとファンの関係性を描いたという意味では、「FOLLOW」は“キスマイ版「星屑のスパンコール」”と言っても過言ではないだろう。
歌唱と歌割りの絶妙さ
続いてボーカルワークと歌割について。藤ヶ谷・北山が主軸であるのは従来どおりだが、二階堂の1番Aメロ後半への起用や、千賀の1番サビ前・ラスサビ前の起用が印象的だ。
「FOLLOW」は「KIS-MY-WORLD」収録曲なので、avexがニカ千のポテンシャルに気づき始めた頃なのだろう。
二階堂ソロパートの1番Aメロ後半「猛獣と化したエナジー 今だけSet me FREE」。この詞に二階堂を当てはめることが歌割りの最適解すぎて聴く度に唸る。
のちに「Up&Down and Up&Down,Yo Dance!」(2017年)でも「近づくのさ So just like a jaguar」というAメロ終わりのフレーズを二階堂が歌っているのだが、“猛獣”とか“jaguar”とかそういう単語を彼にあてがいたくなるの超わかる。
声そのものにパワーがあるから強そうなワードがよく似合うのよ。彼自身はカワウソみたいなキュートなお人柄ですけども…。
千賀の1番サビ前「Follow me」、ここはサビ前の一番オイシイところ。千賀はそれこそいざなうような「Follow me」を聞かせてくれている。2番では藤ヶ谷が伸びやかに張り上げ、落ちサビ前は玉森がささやくように、アウトロラストでは北山がそっと置くように、四者四様の「Follow me」で飽きさせない。
ラスサビ前の千賀の「GO for the GLOW Now follow…FOLLOW…」もボルテージが上がった頂点部分のパートで、楽曲の見せ場部分の一つだ。メロディの流れから直前のパートを歌う北山がそのまま歌っても何ら違和感はないのに、わざわざ切り離して独立したパートにしたことにこだわりを感じる。
がなるように入る「GO for the GLOW Now」から、力強さの中にビブラートを効かせた「follow…FOLLOW…」の対比が素晴らしいのなんのって。ひとフレーズの中で表現を使い分ける器用さと、自身のパートに対する思いの強さが伝わってきた。
2番Aメロは前半を横尾・宮田、後半を二階堂・千賀というパート割になってはいるが、ボリュームのバランスは宮田・二階堂にそれぞれ大きく割り振られている。
このパートのポイントとしては、宮田に「カーテンコール」、二階堂に「ブラックアウト」を言わせたかったのではないか…?と思わずにはいられないほど歌詞がしっくり来ているというところだろう。
この重さのあるサウンドの中で明るさを抑えて歌ってみたけれど隠しきれずに出ちゃった、みたいな宮田の歌声に微笑ましさを感じるし、ここのオクターブ上のコーラスは2018年の今だったら横尾のパートとして振られてるだろうなと思うと本当に「ConneXion」の功績は大きい…。
3年前の楽曲を聴いて未来の横尾渉に可能性を見出すことができるってすごくない??ポテンシャルが無限大だわ。アケテミタクナイ…?(裏声)
続いて玉森のパートを。ソロパートとしてあるのは2番Bメロ。ただし、声にエフェクトが掛けられているので一発で玉森だとわかるのは至難の業だ。
他はイントロの「Now Follow, Follow…」(2回目)、1番終わりとラスサビ後の「follow, follow, follow, follow」(藤北とユニゾン)、落ちサビ前のウィスパーな「Follow me」と、こちらもなかなか初聴で認識するのは難しい。
声とパートが一致する量で言えばよっぽど二階堂のほうが多いのだが、頭から終わりまで全体通して玉森の存在を感じずにはいられないから不思議だ。歌わずとも示される存在感、只者じゃない…。
「FOLLOW」では藤ヶ谷の伸びやかな歌声やフェイクを存分に堪能できる。
2番サビ前の「Follow me」では、他の箇所で千賀・玉森・北山がそれぞれ担当するのとは異なり、藤ヶ谷の持ち前のクセのない高音で華やかさが出ている。
この曲は裏メロがかなり多いのだが、そこで聞こえてくる藤ヶ谷の声はもはや安心感すらある。
ピアノの切なげなサウンドと共に藤ヶ谷が歌い出す落ちサビは、まさに彼の声の持ち味が生かされているパート。
それまでのハードなサウンドから一転し、歌詞も「目前のライトに 君を探してる」という最も言葉の引きが強い局面で、声の表情豊かに歌い上げる藤ヶ谷が起用されるのはハズレのない選択だ。
そんな藤ヶ谷と共に全体を支えているのが北山。ソロパートはイントロの「I know U~」、1番Aメロ後半、間奏明けBメロ、落ちサビ「奪いに行くよ~」、ラスト「Follow me」の他、主メロの裏で「yeah」が挟まっていたりと、登場回数は多い。
「FOLLOW」の中では藤ヶ谷が“明”、北山が“暗”の部分を担っており、北山パートは激しめの音とともにあることから楽曲のギラギラ/オラオラ/ハード/ヘビーな印象は彼のパートから感じるところが大きい。
藤ヶ谷が裏メロが多いのに対し、北山は(無くはないが)主メロで全員パートを基盤として支えている構図は、キスマイ楽曲のオーソドックスなかたちである。
その中で二階堂や千賀パートの置き方は2015年時点では意表を突くものだったろうし、そういう試みができるのも北山の歌唱のクオリティが高めの位置で安定しているからこそだろう。
おわりに
「FOLLOW」について、サウンド・歌詞・歌唱とそれぞれの切り口で考えてみた。
治安の悪い曲が好きなので以前から「FOLLOW」も例外なく好きだったのだが、これまでになく曲の細部を見ていったことでより一層曲への愛着が増すこととなった。
グループで歌う場合、誰の声を前に押し出すかで印象がガラリと変わるものだが、藤ヶ谷・北山をドンと据えた上で、ユニゾン時に7人の声をきれいに並列に並べるのではなく、キスマイの声として7人それぞれのエッセンスをうまくミキシングしている絶妙さ。
やはりエイベちゃんとは一生ズブズブでいたいなと改めて思うのであった。
▼参照サイト
▼収録アルバム
▼ライブパフォーマンスも圧巻
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