前回、Kis-My-Ft2のトリプルA面シングル『INTER』より「Tonight」を取り上げてレビューした。
今回は『INTER』の2曲目に収録されている「君のいる世界」について書いていく。
君のいる世界
作詞:イワツボコーダイ
作曲:GRP・イワツボコーダイ
編曲:GRP
コーワ「ホッカイロぬくぬく当番」CMソング
曲構成
サビ
Aメロ|Bメロ|1サビ
Aメロ|Bメロ|2サビ
Cメロ|落ちサビ|大サビ
アウトロ
曲について
「陽・静」のバラード
1曲目の「Tonight」が「陰・動」なら、この「君のいる世界」は「陽・静」と言えるくらい正反対の楽曲である。
キスマイのバラード曲は、完全な「静」よりも、リズムをしっかり刻む「動」のほうが「キスマイらしさ」*1 があるように感じる。
「珠玉のバラード」(公式)というように、メジャーコード+スローテンポで進んでいくが、サビではしっかりベースとリズムが鳴るので、ダレることなく聴くことができる。ベースとリズムが、1番ではBメロ後半からベース→サビからリズム、2番Bメロ頭からベース・リズムの両方が入ってくるのも、ダラダラなりがちなスローバラードの進行を引き締めている。
冬の音色とキスマイらしい音色
音色は、ピアノをベースに、随所で鳴らされるマークチャイムやスレイベル、アクセントとして使われるティンパニが、冬の雪景色を想像させるのに一役買っている。
マークチャイム
スレイベル
ティンパニ
(参照)http://www.tuhan-shop.net/the%20orchestra/oke-gakki/m2-1.html
もちろん、バラードには欠かせないストリングスも使われているが、シンセサイザーも裏拍で控えめに鳴っているのにも注目したい。ド直球のバラードなら別にシンセを使わなくたっていいのだが、「キスマイらしさ」を感じさせる要素として入れてきているのではないか。
曲調・歌詞だけなら他のジャニーズのグループ、もしくは他の男性ボーカルグループでもありそうなものだが、シンセ音を入れることで「キスマイっぽさ」を感じさせるのである。
歌詞について
タイアップありきの冬ソング
「君のいる世界」は、ホッカイロのCMソングというタイアップがあるので、歌詞にも「ぬくもり」「きらめく雪の中で」「凍えたカラダ」「鈴の音響く街」「冬の空」といった「冬」ワードが出てくる。
リリースが3/1なので冬の曲にはシーズンが過ぎてしまっているのだが、それこそタイアップありきでの楽曲であるということをうかがい知ることができる。
歌詞のストーリー
歌詞のストーリーは極めて幸せなラブソング。1番では付き合っている「君」に何と言えば想いが伝わるのか?と悩みつつ気持ちを伝えることを決め、2番ではもっと「君」に恋をして、Cメロでプロポーズ、落ちサビで誓いの言葉、大サビでフラワーシャワーと、最初から最後まで「君」と「僕」のあたたかな冬のラブストーリーである。
歌唱について
バラードやスローテンポの曲は音数がそこまで多くないので、歌っている人間の声をよく聴ける一方、歌唱力がないとボロがすぐ出てしまうという難点もある。CD音源は、レコーディングしたものを加工でどうとでもイジることができるけども…
安心・安定の北山→藤ヶ谷の歌割り
歌い出しのサビ・落ちサビの歌割りの、北山→藤ヶ谷という流れが与える安定感や安心感は何なのか。声のアタックが強く少し鼻にかかった声の北山から入って、半音上がる音階を甘く歌い上げる藤ヶ谷で終わるパターン。これが二人逆だったら収まりが悪くなってしまうのである。
歌い出しというのは聴く側にインパクトを与える役割があるが、藤ヶ谷がこのメロディーで歌い出しだと、収まりよく歌い上げてしまうので期待するインパクトを与えられない。少し声や歌い方にクセがある方が「おっ」と思わせる効果があるのである。
ふわっと安定感を出す玉森
玉森は1番Aメロをソロで歌い、2番Bメロを北山・藤ヶ谷と一緒に歌っている。玉森のふわっとした声と歌い方は、この曲のようなスローバラードにおいてこそ良さが出てくる。音の高低差があっても、安定感を感じさせるのである。
中和の横尾・宮田、融和の二階堂・千賀
また、「君のいる世界」では2人で歌うパートもある。1番Bメロ前半・2番Aメロ前半を横尾・宮田、1番Bメロ後半・2番Aメロ後半を二階堂・千賀に割り振られている。
この4人の中で甘い声を持つ宮田・千賀を別々のパートに振っているのは、全体の平均化という意味で正解だと言える。宮田はクセのない甘さ、千賀はクセのある甘さを持つ声である。
キスマイの爆弾(良い意味でも悪い意味でも)である横尾と宮田を同じパートにすることで横尾の特徴的な声がマイルドに中和されているし、千賀と二階堂の組み合わせは中和ではなく融和といったほうがいいくらい溶け合っている。
語尾に千賀っぽさ(ビブラート)・二階堂っぽさ(息を抜くような歌い終わりの処理)が出てくるが、歌っている間は一人で歌っているかのような合わさり具合である。
「Tonight」でもそうだったが、やはり二階堂の声質がキスマイで異彩を放っている。曲の中のアクセントやインパクト要員として今後のキスマイ楽曲の可能性を広げるキーマンであることに間違いない。
こういった点からしてもよくできたパート割である。
まとめ
「グループらしさ」を「Tonight」と正反対の曲で表現できる振り幅の広さ、ひとりひとりの声を理解した上でのパート割や歌い方のディレクションなど、現時点でのバラード曲の最適解を楽曲に詰め込んでいる。もちろん何も考えずにラブソングとして聴くにも耳馴染みの良い作品である。
次回はトリプルA面3曲目の「SEVEN WISHES」をレビューする。
Tonightについての記事はこちら↓
*1:デビュー以降のavex産のダンスミュージックだったりEDMだったりを取り入れたミディ~ハイテンポなポップスを指す。