2017年6月21日、A.B.C-Zの4thアルバム「5 Performer-Z」がリリースされた。高い身体能力を活かしたアクロバットや、観るものを惹きつける華やかなパフォーマンスで舞台を中心に活動している彼らは、今年デビュー5周年を迎えてますます輝きを増している。
デビュー5周年イヤーであるA.B.C-Zの4thCD アルバムのリリースが決定!
今作は彼らの代名詞であるアクロバットやダンスに代表される“音楽に基づくパフォーマンス”とグループのバラエティ力を活かした“ユーモアで魅せるパフォーマンス”の2面性をフィーチャーした『パフォーマンス』を絶対的なテーマにしたアルバム!タイトルも5周年を5人で迎えたA.B.C-Zが、グループの持つパフォーマンス力を存分に発揮した事から「5 Performer-Z(読み:ファイブパフォーマーズ)」と名付けられています!
A.B.C-Zのデビューは、CDデビューではなくDVDデビューという映像作品でのデビューだった。同世代や後輩のデビューを何組も見送ってきた彼らが見出した活路が、パフォーマンスに特化したグループになるというもの。従来のジャニーズグループのような歌やダンスに加えて、これでもかと挟み込まれるアクロバット、そして舞台経験を活かしたコントやアクティビティを取り入れたパフォーマンスは、数多くあるジャニーズのグループにおいてかなり異色の存在と言えるだろう。
そんな彼らのデビュー5周年に発表されたのが今回のアルバムである。もちろん音楽作品であることは間違いないのだが、初回限定盤に付く特典映像のボリュームにも驚かされる。Music Videoとそのメイキングだけでなく、制作過程のドキュメントやこのアルバムのために作られたコンテンツもあり、ファンにはたまらないラインナップになっている。
とはいえ、やはり楽曲厨としては肝心の収録曲の出来栄え如何がやはり気になるところ。映像コンテンツが良くても楽曲がイマイチだと、「予算の配分をもっと曲に注げやポニキャ!」と私の中の内なるヤ◯ザが出てきてしまうので、油断ならないよ!w
今回は初回限定盤収録の12曲をレビューする。
5 Performer-Z
テレパシーOne! Two!
作詞:上中丈弥 作曲:Victor Sagfors/Ricky Hanley 編曲:CHOKKAKU
アルバムリード曲。ファンキーなギターのカッティングとベースのスラップに合わさる明るいシンセサウンドが夏の爽やかさを感じさせる。それなのにイントロがちょっと昭和アイドル歌謡のような印象もあるのである。少年隊の「PGF」みたいな。でも全然古臭さはなくて、2017年に最適化された少年隊サウンドに仕上がっている。舞台班という意味でも音楽性の面でも、少年隊のDNAを引き継いでいるのはA.B.C-Zなんだろうな。
Bメロが3拍子→3拍子→2拍子の構成になっているのが、この曲をキャッチーにしている要因に違いない。こういう拍子の変化はダンスを踊ることが前提にあるジャニーズ楽曲においてほとんど見かけないのだが、逆にパフォーマンスの幅が広がる可能性も秘めている。
Aメロとサビのキーの高低差は聴く分には変化が大きくておもしろい。踊りながら歌う側はめちゃめちゃしんどそうだけど…。
ドキナツ2017
作詞:A.B.C-Z 作曲:Victor Sagfors/Daniel Fagerudd 編曲:生田真心
「テレパシーOne! Two!」でパフォーマーとしてのかっこよさや爽やかさを見せたかと思えば、急にアイドルポップに振り切ってくるジェットコースター感すごい…。しかもこれが作詞:A.B.C-Zっていうんだから、朝からホイップクリームをモリモリに盛ったパンケーキをお腹いっぱい食べたくらい胃もたれがスゴい(褒めてる)。
10代の若い子に歌わせる曲をアラサー(と24歳)がやるギャップと遊び心が面白いなと思うんだけど、デビューから5年ってまだ若手だもんね。
Endless Summer Magic
作詞:岩里祐穂 作曲:KEN for 2SOUL MUSIC, Inc / Kyte / David Amber 編曲:石塚知生
サマーポップはこれだ!と言わんばかりの爽やかさと夏が終わる名残惜しさを目一杯詰め込んだ一曲。どうして夏の終わりを描いた曲は明るい曲ほどこんなにも心に切なさを残すのだろうか。
2番Bメロ河合パートの「はぐれても 溢れても」の「も」の捨てるような音の処理がたまらなく好き。譜面通りでも勿論いいんだけど、あえてあの歌い方にしているのが曲のアクセントになっている。その後のサビに1番とはまた違う印象を持って入れるのが憎い演出である。
Whippy
作詞:松井五郎 作曲:mikito 編曲:岩田雅之
whippy -【形】むちのような、弾力性のある、しなやかな
しなやかなメロディラインと弾力を感じさせるリズム&ベースセクションがまさにタイトル通り。クセの少ない橋本の伸びやかな甘い声とメロディ・詞の世界観の相性が抜群でいつまでも聴き続けたくなる。
Love To Love You(橋本ソロ)
作詞:MiNE 作曲:MiNE / Atsushi Shimada / Tommy Clint 編曲:Atsushi Shimada
「Whippy」からの流れで聴く曲順の流れが美しい橋本ソロ。嘘をつかれても気持ちが自分に向いていなくても、それでも気づかないふりして愛そうとするなんとも悲しい恋の歌なのだが、橋本の歌声がここにバチッとハマっていて名曲と言わざるをえない仕上がりになっている。
甘さと切なさを絶妙な割合で持ち合わせる彼の歌声はもっと広く評価されても良いのではないだろうか。哀愁のある切なさとはまた違う、もっと影や悲しみが濃い方面の切なさを歌に乗せられるのはなかなか見受けられない存在である。
Mr.Dream(五関ソロ)
作詞・作曲:ヒロイズム / ファンタジ 編曲:佐々木裕
夢と希望をエモーショナルに語った曲を作らせたら右に出るものはいないヒロイズム氏提供の五関ソロ。ハイクオリティなダンスに定評のある彼が演るのにふさわしい、シンセサウンドを効かせた疾走感のあるダンスミュージックである。
まずもって「Mr. Dream」というタイトルからして五関自身を描いたように受け取れるのだが、長い下積みがあったりなかなか注目されなかったり、不遇が続いているアイドルすべてに当てはめられるし、みんなに救いのある歌詞の世界観はヒロイズム節が炸裂している。
Bメロでトラックのボリュームが一瞬絞られるのだが、そこ絞るならもっと声にエフェクトかけたりしてもいいんじゃない?なんて思うのはavex製のダンスミュージックに耳を侵されてるからだろうなw
あと、どうしてもヒロイズム曲というだけあってNEWSが脳裏にチラつくのは私だけだろうか。NEWSがこの曲をやったらそれこそストリングスをバリバリ使ってもっとメロディアスにしてくるんだろうなあ、なんて考えながら聴いてた。
OTAGAI☆SUMMER!(河合ソロ)
作詞:Micro 作曲:Micro / SawaCreaM / 新田雄一 編曲:Micro / SawaCreaM / Nagacho / 新田雄一
河合ソロはいつも一筋縄ではいかない印象があって、今回もなかなか色の濃い曲を打ち出してきた。Def TechのMicroプロデュースの、AメロBメロは控えめなEDMからサビはトロピカルに転生するサウンドなのだが、歌詞にもサウンドにももうMicro節がビシバシ織り込まれていてDef Techの「My Way」が大ヒットしてアルバム「Def Tech」をアホほど聴いた世代的には懐かしさがこみ上げてくるしかない。あ、年齢がバレる。
まあでもDef Techがわかるからこの曲の可笑しさも面白く感じるんだけど、今の10代とか20歳前後の子たちがこの背景がないまま曲を聴いて、果たして良さを共有できるかどうかは微妙なところ。そもそもそこをターゲットにはしてないのか?誰か私にA.B.C-Zのターゲットとしている年齢層をご教授ください…。
アツあつ!? 夏フェス☆!!(塚田ソロ)
作詞・作曲:前山田健一 編曲:原田ナオ
塚田僚一という怪物を要するA.B.C-Zの包容力もそうだけど、彼の存在を許容して自由にさせてるジャニーズ事務所も大概懐の広い事務所だと思う。アウトかセーフかで言えばどう考えてもアウトに振り切ってる塚ちゃんの存在はA.B.C-Zの切り札だし事務所のダイナマイトだし日本の宝だよ(????)
ヒャダイン提供って情報が出てからせいぜい予想してたのが、宮田ソロ「ヲタクだったってIt’s Alright!」くらいのハジケ具合だった。しかし予想というのはアテになるものではない。予想のはるか斜め上を突き破ってきて、塚ちゃんとヒャダイン天才かと思ったよね。情報過多だし何だこれ!?が曲の頭から終わりまでずっと続いて曲が終わる頃には思考停止する。
曲を聴くのが怖い方は歌詞だけでも見てほしい。ますますワケがわからなくなるから。(褒めてる)
アツあつ!? 夏フェス☆!! 塚田僚一(A.B.C-Z) 歌詞情報 – 歌ネットモバイル
Dolphin(戸塚ソロ)
作詞:戸塚祥太 作曲:戸塚祥太 / 清水哲平 編曲:清水哲平
スタジアム・ロックを感じさせるスケールの大きなサウンドに、文学的な歌詞や台詞が美しく乗る。とにかく曲のクオリティの高さに圧倒されるばかりだ。NEWSでいう「U R not alone」だし、Kis-My-Ft2でいう「Dream on」にあたるのが、A.B.C-Zではと戸塚祥太のソロ曲「Dolphin」なのである。
歌詞に出てくる「先人」「戦友」「才能」がキーワードになっているのは間違いなくて、「疾走する先人たち」「並走する戦友たち」「追走する才能たち」が誰を・何を指しているのか考察せずにはいられない。
「先人」はアイドルという道の先を行く事務所の先輩たちだろうし、「戦友」は共に活動しているA.B.C-Zのメンバーであり、世代とデビュー時期が近いキスマイ(であってほしいという私の勝手な願望)だろうし、「才能」は才能あふれる若い後輩たちのことではないだろうか。言葉をうまく操る彼ならそのくらいの意味を込めていてもおかしくないだろう。
Fire in Love
作詞・作曲:坂室賢一 / 押田誠 編曲:鈴木雅也
ポップサウンドが並ぶ前半とは打って変わって、アップテンポでギラギラしたダンスナンバー。正直前半の感じでアルバム全体が構成されていたらアルバムとしてしんどいな…と思っていたのだが、この曲の登場で一気に状況が変わった。アルバム終盤に向かってボルテージが否応なく上がるし、A.B.C-Zはアブナイ恋のストーリーがまーーよく似合う!
この曲を賞賛する言葉がいくらあっても足りない。そのくらい好みにハマりすぎてつらい苦しい嬉しい(ドMか)。
Glory Days
作詞:Komei Kobayashi 作曲:Didrik Thott / Sebastian Thott / Andreas Oberg 編曲:Sebastian Thott
クレジットを見てこちらもダンスナンバーかと思いきや、しっとりしたアコースティックなバラード。重めのベースと全編にコーラスがかぶさっていることで、アコースティックではあるがダレることなく最後まで聴かせてくれる。橋本のボーカルの美しさをここでも存分に堪能できる。
Reboot!!!
作詞:MiNE・春和文 作曲:mikito 編曲:鈴木Daichi秀行
3rdシングル。
EDMのダンスナンバーとはいえ、ブラスやギターのカッティングなどでサビは特にポップスの要素が強い曲である。驚くほど書くことが何も浮かばなくて申し訳ない…。
総評
「パフォーマンス」に特化したA.B.C-Zが5周年イヤーに打ち出したアルバムは、ジャニーズアイドルの系譜を踏襲しつつ、ソロでは個性を爆発させた色濃い作品になった。まだまだ音楽面では試行錯誤しているように感じられるが、A.B.C-Zにおいては「音楽を使ってのパフォーマンス」のほうが重視されるため、音楽性の確立というのはもう少し時間がかかりそうである。というか別に確立せずとも、どんな曲もまんべんなくやれるくらいが良いのかもしれない。
そんな中でも心をつかまれる曲があったのは嬉しかった。「Dolphin」「Fire in Love」は今後繰り返し聴き続けることになりそうである。「Endless Summer Magic」も夏の終わりに聴く曲のスタメンに絶対入れようと思う。
そして夏の暑さにアタマがおかしくなったら「アツあつ!? 夏フェス☆!!」を聴いてさらにおかしくなろうな…。