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【Kis-My-Ft2】シングル「HANDS UP」レビュー

Kis-My-Ft2
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2019年7月10日、Kis-My-Ft2通算24枚目のシングル「HANDS UP」がリリースされた。

表題曲の「HANDS UP」のほか、初回限定盤A・初回限定盤B・通常盤にそれぞれに収録されているカップリング4曲は全てタイアップ付きと、引きの強い楽曲がラインナップされている。

 

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総評

「君、僕。」「君を大好きだ」と直近のシングルはポップス路線の楽曲であったが、今回の「HANDS UP」はこれぞavex!なシンセをゴリゴリ効かせるダンスナンバー。

4月末にリリースしたアルバム「FREE HUGS!」が大人ヤンチャをテーマに攻めていたことから、その流れを引き継ぐ強いサウンドに仕上がった。

表題曲の攻めのダンスナンバーから、カップリングはピコピコサウンドやサンバテイスト、ピアノバラード、軽快なボップスと、幅広く楽曲を繰り出している。

「HANDS UP」と「OPaPiPo」が同一グループの作品であり同じ盤に入っていることの面白さ。この振り幅はキスマイの大きな強みだ。

作家陣には、キスマイ楽曲ではおなじみの栗原暁(Jazzin’ park)、ケリー、MiNE、Atsushi Shimada、竹内雄彦らが顔を揃えるほか、K-POPへの楽曲提供が多い北欧勢も多数起用。

日本でも楽曲制作のボーダレス化が加速する中、より良い楽曲を集める力もアーティストとレーベルには必要となっているが、クレジットに並ぶ多種多様な面々を見て改めてキスマイとエイベの地盤の強さを思い知らされる。

オリコンウィークリーチャートでは初週19.6万枚を売り上げ*1、デビュー以来シングル24作品連続となる1位を獲得。

ビルボードでもセールス・総合ともに1位に輝き*2、夏の大型歌番組では「HANDS UP」のキャッチーかつヘビーなサウンドと激しいダンスで魅了した。

この記事では、表題曲「HANDS UP」と全カップリング曲をレビューする。

 

楽曲レビュー

HANDS UP

作詞:栗原暁(Jazzin’ park)
作曲:Christian Jansson / CR / Subin Kim
編曲:Christian Jansson

四つ打ちのリズムの中でメロディとシャウトが入り乱れる攻めのダンスナンバー。派手にシンセ音を鳴らすEDMで、小綺麗にまとまることなく暑苦しいほどにガンガンにアゲているのがなんともキスマイらしい。

音楽フェスにダンスミュージックをプレイするDJたちが多く登場したり、日本の音楽シーンにEDMが浸透して久しいが、それでも2019年現在でもダンスミュージックが日本のメインストリームのど真ん中にあるとは言い難い。

だが、ダンスミュージックがコアに派生ジャンルを広げている中、キャッチーかつディープに掘り下げられた「HANDS UP」を2019年のいま、ド直球にシングルA面に持ってこれるキスマイの強さを噛み締めている。

「SHE! HER! HER!」(2012)・「アイノビート」(2012)・「キ・ス・ウ・マ・イ~KISS YOUR MIND」(2013)・「Gravity」(2016)など多くのダンスナンバーをリリースしているキスマイ。ファンも一般のリスナーも耳が肥えていて、単にノリがいいだけでは心をつかむことができない。

それだけに期待値はどうしても高くなってしまうのだが、それを悠々と超えてくる楽曲を世に放つキスマイにしてやられた。

お手上げだぜ。HANDS UPだけに。(cf. CDTVエンディング)

 

Aメロ→A’メロ→Bメロ→前サビ→サビ→後サビと、進行がかなり細かく別れているのが本作の大きな特徴だ。

これを何も考えずにやると曲始まりから1サビ終わりまでがただ長くなって飽きてしまいかねないが、そうなっていないのはトラックそのものが良質であることがまず大前提にある。

特に秀逸なのがBメロだ。それまで縦ノリで進行していたところを一気に音色を絞って引き寄せ、千賀の美声+横尾の上ハモでギュッとフォーカスさせる。

そこからふた回し目の4ビートにベースとシンセの裏メロが絡みつき、スネアで細かく刻まれるリズムが加勢する。この8小節を聴いてブチ上がらないことがあるだろうか、いやない。(反語)

このふた回し目にメインで乗る声が、前半が二階堂・後半が藤ヶ谷というのも威勢の良さに拍車をかけている。

PPPHをさせないクールさがありながらキャッチーにかましてくるバランスがたまらなく好きだ。

緩急つけたこのBメロがものすごく良いのでここだけで白米3杯は食べられるな。

サビでは鳴り続ける裏メロがあくまでボーカルを引き立たせるものとして機能している。

こうして見ると、ボーカルの力を信じているからこそできるトラックなのだとわかる。

サウンド自体は特別新しいというわけでもないが、その分、メンバーそれぞれの持ち味を活かした歌唱と歌割でチャレンジしている点で新鮮味を与えている。

 

22nd SG「君、僕。」では千賀が、23rd SG「君を大好きだ」では二階堂がそれぞれ1番Bメロにがっつりソロパートが与えられ、シングルにおいてもニカ千のポテンシャルを知らしめたわけだが、今回はさらに1番のAメロに宮田、Bメロの上ハモに横尾が配置されたことによってKis-My-Ft2の底知れぬ可能性をより前面に示す形となっている。

合間に挟まれるシャウトがかなり細かい上に、シャウトをコーラスとして入れるのではなく、本人歌唱パートとして割り振っているのも、7人グループだからこそできるバラエティ豊かな配置だ。

どのメンバーも歌声と表現に強者の余裕と貫禄が出ており、声の士気の高まりが曲負けしていなくて本当に頼もしい。

挑発したり殴りかかったりするように発声したかと思えば、サビでは繊細に裏声を使っていたりするので、一曲の中でたくさん聴きどころを楽しめるのも「HANDS UP」の魅力と言えよう。

 

歌詞は、野心メラメラでありながら自分自身がどうありたいのかを問いかけ、時代を掴めと自らを鼓舞する。

誰かに向かってというよりも、自分へ、もしくは自分たちに向けて内側に強いメッセージを放っている。

強めのワードが並ぶ治安悪めな歌詞は、重くビートを刻むトラックとの相性が抜群だ。

いいぞ!もっとやれ!!とダイナマイトを焚き付けたくなる威勢の良さがたまらない。加勢したくなる気持ちををくすぐるのがKis-My-Ft2の良さなのかもしれない。

 

真夏と太陽

作詞:ケリー
作曲:SAMDELL / Julie Yu
編曲:石塚知生

コーワ「ウナコーワクール」CMソング
通常盤(M2)収録

タイトル通り暑い夏と爽やかさを感じさせるサマーチューン。エレキギターのメロディにブラスサウンドやサンバ音楽で使用される打楽器がふんだんに使用され、この夏ヘビロテ待ったなしのエナジーソングである。

突き抜けた明るい曲というわけではなくどこかエモーショナルな雰囲気があるのは、ひとつに後ろのほうで鳴らされるシンセサウンドのメロディの効果だろう。

この音は「PICK IT UP」のBメロでも使われている音で、「PICK IT UP」の時はかすかな緊張感を与えていたのだが、「真夏と太陽」では明るさと暑さを緩和させる役割を果たしている。

また、サビのベース進行もただ楽しいだけじゃない雰囲気を醸成している一因だ。

夏の曲ならひたすらにアゲても悪くはないが、ウナコーワクールのタイアップが付いているのもあって、幾分の涼しさを曲から漂わせているのが巧い。

些細なところだが細かいギミックが効いているのに気づくと、んも~~やってくれたな!!!と褒め褒めしたくなるものだ。

 Dメロでは “Come on now! Are you ready?” のフレーズを前半を藤ヶ谷→玉森→北山→二階堂でつなぎ、後半を宮田→横尾→千賀と回して最後にまた二階堂に戻ってくる。そこにサビ前と同じフレーズが重なっていく。

ここがめちゃくちゃアイドルらしさがあってかわいい。キスマイよ、永遠に健やかに笑顔でいてくれと願わずにはいられない…。(何目線?)

 

永遠結び

作詞:MiNE
作曲:MiNE / Atsushi Shimada
編曲:ha-j / Atsushi Shimada

リクルート「ゼクシィ縁結び」CMソング
初回限定盤B(M2)・通常盤(M3)収録

永遠の愛を誓うピアノバラード。1番は藤北玉、2番は横宮二千でAメロ~サビまで完結させているという思い切った歌割が、ラスサビではじめて全員が合わさる大団円となるのがドラマチックな一曲だ。

ピアノとストリングスがメインのトラックに静かにリズムが鳴る1番ではじっくりとボーカルを味わわせ、2番ではリズムとコーラスがボーカルにプラスαで乗っかることにより曲の世界観の広がりを聴かせる仕様となっている。

“未完成な僕等 ひとりじゃ生きれない”
“ひとつをふたつに ふたつをみっつに”
という歌詞からは、アルバム「FREE HUGS!」のテーマの一部である“SHARING LOVE”を彷彿とさせる。

婚活サービスのCMソングではあるが、結婚のみならず家族愛や周囲の人への愛を包括して歌っているのだ。

このどストレートなラブバラードを乗りこなす地力の強さは歌割に拠るところが大きい。

藤北玉が歌う1番の歌詞は情景描写がメインで、物語の導入の要素が強い。声一本で丁寧に歌うことでグッと「永遠結び」の世界に引き込んでいる。

サビでは“未完成な僕等 ひとりじゃ生きれない” な前半を藤ヶ谷・北山、
“誰かの為じゃない 君の光でいたい” な後半を藤ヶ谷・玉森で歌い分けているが、歌声でいうと陰陽で両極な北山と玉森を、陰寄りの陽の藤ヶ谷と歌わせる采配によって前半・後半でガラッと雰囲気が変わるのが面白い。

2番では声のテイストが異なる4人が、それぞれのパートから曲の世界を広げている。

1番からの流れを引き込む二階堂、ソフトに優しく深い愛を感じさせる千賀、曲のミソとなるフレーズをソフトな入りをだんだん力強くクレッシェンドさせる宮田、どこかもの哀しさも感じさせながら核心をつく横尾。

2サビは前半を二階堂・千賀、後半を宮田・横尾で歌うが、二階堂・宮田にやや比重を置いて前後のバランスを取っている。

声のアタックの強さと芯の太さを揃えるとしたらそうなるだろうな、という納得のバランスだ。

転調後して迎えるラスサビでは1フレーズは全員で歌い、ふた回し目に藤北玉の主メロと横宮二千の裏メロで掛け合いが入る。

ここがとてつもなくクライマックスの感情の高鳴りを感じさせて号泣必至である。

 

Go for it!

作詞:竹内雄彦
作曲・編曲:Simon Janiov / Carlyle Famandes / Alyssa Ayaka Ichinose

フジテレビ系「もしもツアーズ」テーマ曲
通常盤(M4)収録

軽快なピアノのリフとファンキーなギターのカッティング、ベースのスラップが心地よく耳を駆け抜けていくポップナンバー。

イントロの一瞬で好きになってしまうキャッチーなサウンドと前へ進むポジティブな歌詞、半歩前から引っ張ってくるようなキスマイの歌唱の総合技が光る。

ピアノの音色は生音ではない打ち込みの音源だと思うのだが、それがいい意味での音の軽さが出て、快活さや軽やかさを印象づける。

「真夏と太陽」と同様にブラスとシンセも鳴っているが、「Go for it!」ではシンセがピアノを引き立てつつ全体を包括し、ブラスは要所で控えめに顔を見せるといったところだ。

「Go for it!」は歌詞と歌割の食い合わせがとても良いという点を推したい。

藤ヶ谷の“歩き始めたのはもういつのこと どこまで行くのだろう”に北山が“Long way from that day”と精神的に寄り添い、
2Aではピアノとベースだけが鳴る中で宮田の“一人きりじゃどこまで行けるのかも 分からず彷徨ってた”に横尾の“You were always beside me”で物理的に寄り添ったあとにリズムセクションの音が戻ってきて、宮田の“僕たちは「ひとつ」で「独り」じゃない 光射す場所まで”と繋がる。

この一人の時でも独りではないことに気づく一連の流れは、Kis-My-Ft2というグループの精神性にも繋がるところがある。

Bメロで1番は玉森に“誰より遠くへ行こうと 夢を掴むと決めたから”と前へ進む意志を、
2番では千賀に“遥かに霞んだ視界が 決意を意思を迷わせる”と弱さもあることを歌わせる対のバランス、
そしてDメロで玉森が“「誰よりも遠くまで」あの日決めただろう?”と伏線を回収してくる絶妙さを強く褒めたい。(夏井先生構文)

この歌詞にこの人あり、をカップリングでさらっとカマしてくるのがキスマイなのである。

何なんこのグループ、強すぎでは…???知ってたけど……

 

OPaPiPo

作詞:ワタナベハジメ
作曲:Jan Baars / Rajan Muse / Ronnie Icon
編曲:Jan Baars / Rajan Muse / Ronnie Icon

dTV「キスマイどきどきーん!」エンディング
初回限定盤A(M2)収録

単にかわいいだけで済まさないのがキスマイ楽曲。少ない音色に乗る歌詞とボーカルワークの遊び心が、なんでもないフリして細かく作り込まれている絶妙さに舌を巻く。

この曲の初出は「キスマイどきどきーん!」エンディングで、2月に配信が始まってから今回のリリースまでそんなにピンと来ていなかったのだが、これは音源を聴き込むことでその良さに気づくタイプの曲であった。

サビ前以外は全て同じ進行の繰り返しで構成されているトラックは、最小限の音だけを集め、過度に音を盛り盛りにしないことで洗練された印象を与える。

ボーカルとコーラスワークでしっかり魅せることが前提にあるからこそうまく機能している。

同列に並べるのはやや違うのかもしれないが、このトラックのシンプルさはPharrell Williamsの「Happy」を聴いたときの感覚に似たものがあった。

 「OPaPiPo」は歌割よりもボーカルワークに統一感があるところに注目したい。

例えば“ふわわあくび”の千賀と“びびびせのび”の二階堂が最後の“び”で同じような息の抜き方をしている。

千賀が音源でこういう処理をする印象がなかったので意外だったし、逆にこの息の抜き方をよくする二階堂が若干短く切っているところをみると、二人の歌唱を揃える意図のあるディレクションなのだろう。

サビでは寝起きのポヤポヤ感を7人の歌唱でうまく出しており、統一されたディレクションとそれに応えるキスマイの表現力に気持ちが高まる。 

以前からキスマイは、藤北を筆頭に子音をはっきり発音していて歌詞の聞こえが良いのが好きなのだが、“顔洗う Wash your face”以降の英詞の発音、特にteethの「th」をちゃんと「θ」で発音しているところに無性に興奮した。

細かい所に神経が行き届いていることの蓄積が曲全体の印象にもつながるので、意外と馬鹿にできないところなのだ。

まあでも、この「θ」の発音に興奮するのは全国1億2千万のキスマイの姫たち(概念)の中でも変態寄りな自覚はあるよね…。へへへ…。

 

おわりに

常々キスマイ楽曲は振り幅がすごい!と述べているが、今回はシングルの中で両極端を攻めてなおかつ王道もきっちり決めてくる地力の高さを示してきた。

良質で魅力的な楽曲が提供され、それを歌うキスマイの歌唱と表現・解釈がいい形で収められている喜びはひとしおだ。

音楽での猛攻に一段とギアを入れた、シングル「HANDS UP」。

Kis-My-Ft2の楽曲の可能性はまだまだ広がり続けている。

 

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