食べ頃なキスマイを、召し上がれ――。
2018年4月25日、Kis-My-Ft2の7枚目のアルバム「Yummy!!」がリリースされた。アイドルのアルバムのジャケ写でまさかの顔面パイ。顔が見えないジャケ写もアイドルなのに顔が写ってない…というよりもキスマイだからこそバラエティ的にオイシイと思えてしまう。
アルバムタイトルの「Yummy」という単語には、一番メジャーな「おいしい」の他に「すてきな」「素晴らしい」「セクシーな」「魅力的な」という意味がある。今回のアルバムはまさにその全ての意味を内包した作品となっている。
総評
「7」へのこだわり
キスマイ7人でデビュー7年目に放つ7枚目のアルバムと、「7」づくしの今作。同時リリースのシングル「You & Me」はセブンネットショッピングで77,777枚限定販売を行うなど、プロモーションにおいても「7」にちなんだ展開を見せている。
それと同様に、楽曲でも「7」を意識して書かれたものが1曲にとどまらずいくつもあるというのが興味深い。Kis-My-Ft2にとって「7」はそれだけ特別な数字なのだろう。曲を聴いたり歌詞に目を通すと「そこまでこだわるか!?」というほどに「7」が出てくる。このこだわりの深さには正直驚いた。
「3+4=7」ではなく、「7」は「7」なのである。
過去の自分たちを超えていく
前作の「MUSIC COLOSSEUM」が音楽表現への挑戦だったとしたら、この「Yummy!!」は、過去の自分たちを超えることに焦点が当てられている。
Jr時代からの名曲「FIRE BEAT」への対抗馬として作られた「FREEZE」や、新たな自己紹介曲「We are キスマイ!」、これまでの楽曲タイトルを歌詞に組み込んだ「Mr. Star Light」、藤ヶ谷・北山のユニット曲「REAL ME」も新たなものをというより過去の自分たちを更新していく気概を感じさせる。
ジャニーズはまだSpotifyやApple Musicのようなストリーミングサービスへの楽曲配信を行っていないが、今後こういったサブスクリプションで音楽を楽しむことがより一般的になっていった場合、チャート上の仮想敵は他アーティストの新曲ではなく過去の名曲となる。
そして他アーティストの過去の名曲以上に自分たちの過去の楽曲を超える曲を作っていかなければ、少なくとも楽曲をきっかけについたファンは長くついてはくれない。
キスマイ自身やレーベルスタッフが将来的なストリーミングサービスの配信をどこまで意識しているのかは分からないが、今作「Yummy!!」で見せた「過去を超える」という意思表示はいちアーティストとしてかなり意欲的に楽曲制作を行っている姿勢のあらわれであると私は受け取った。
死ぬまで成長期なキスマイ
「青春Don’t Stop!!」の歌詞にもあるが、キスマイは死ぬまで成長期なのだなと痛感したのが、底上げされた歌唱力である。
長期的な目で見ても全員歌が上手くなっているし、何なら前作のアルバム「MUSIC COLOSSEUM」からも明らかに伸びを感じられるから驚いた。1年でここまで変わるのか…!
前作のリリースから横尾・宮田・二階堂・千賀の4人は舞祭組としてアルバム発表・ホールツアーを成功させ、北山・藤ヶ谷・玉森は「まえあし from Kis-My-Ft2」としてのMステ出演やドラマ・映画・舞台の主演を経験。キスマイ7人としてもバラエティでの活躍や大型音楽番組への出演を通して、着実に地力を上げてきた。
(特にハロウィン音楽祭のガチの女装と、CDTV卒業ソングSPでのサクラヒラリは後世に伝え残したいキスマイである。)
特に横宮二千は舞祭組アルバム・ツアーを経て一回りも二回りも成長しているのを楽曲の中から実感できる。メロもラップもびっくりするほど上手くなっているのだ。完璧でなくても場数を踏みまくることによって、結果的にアーティストとしてエンターテイナーとしてたくましさが増している。
また、ツアーメイキングで「もっと歌をうまくなりたい」と言っていた藤ヶ谷は、持ち味である声の伸びに加えて今作では力強さをより感じさせ、曲によって自在に歌声が変化する玉森のカメレオンぶりは目を見張る物がある。そしてそんなキスマイの歌唱の軸としてブレない存在感を示す北山。
経験値を上げた彼らが、その成長の証を音楽作品に残すことができる実力を持ち、カタチにできる環境を持っているということに嬉しさがこみ上げてくる。
「死ぬまで成長期」というフレーズはまさにKis-My-Ft2を言い表すのにふさわしい言葉である。
楽曲レビュー
“7th”Overture
作曲・編曲:HIKIE
アメリカンな雰囲気が漂うカントリー調のOverture。母親が娘にスペシャルなデザートを作ってあげている英語の会話が入る。
Overtureといえばライブの始まりを告げる導入曲に当たるものだが、今回はライブというよりアメリカのシチュエーションコメディが始まりそうな予感をさせる。
Invitation
作詞:ケリー
作曲:Peter Boys / DWB / HIKARI
編曲:石塚知生
ベースのスラップが効いたファンクテイストのミディアムナンバー。そこに加わるブラスとシンセのマリアージュが心地良い。
タイトル通り「Yummy!!」の世界へInvitation(招待)してくれる曲となっている。
意表を突く間奏あけのCメロのテンポダウンはなかなか面白い。同じ調子のファンクが続くかと思いきや一旦落としてから大サビへとつながる流れ。聴き飽きない曲というのはこういう工夫がサラッと入るから憎めない。
ぶっちゃけいまひとつパッとしない曲だな…というのが初見の感想だったのだが、そう思った原因は恐らく曲順のせいだろう。
歌詞の世界観としてはアルバムのアタマに置くべきであるのは間違いないが、Overtureとの繋がりが希薄だし、次の「Mr. Star Light」と逆の曲順だともっと印象が違っていたかもしれない。
このアルバムにケチをつけるとしたら「Invitation」の位置ただひとつなのが非常に惜しいところだ。(単に私がスタートダッシュの速い構成が好きだというのもある。)
ただ、Overture後の1曲目に派手で勢いのある曲を持ってきていた定石を崩すという挑戦的な曲順は、「ゆっくりしっかり味わって食べてね」というメッセージでもあるように感じた。
Mr. Star Light
作詞:MiNE
作曲:MiNE / Atsushi Shimada
編曲:CHOKKAKU
- 「セブンネットショッピング」CMソング
- フジテレビ系「もしもツアーズ」テーマソング
キラキラでポップなシンセが眩しいダンスナンバー。この路線のサウンドと言えば「キミとのキセキ」がパッと思い浮かんだのだが、それもそのはず編曲が同じCHOKKAKU氏によるもの。どおりで好きなわけだ。
この曲の特筆すべき点はなんと言ってもこれまでのキスマイ楽曲のタイトルが盛り込まれている点である。2番Aメロのラップに9曲も盛り込まれている。こういうのオタクが好きってわかっててやってるのがかわいくて愛おしくもある。
さらにグループ名のイニシャルや7人の“Seven”も織り込むなど、Kis-My-Ft2であるからこそ成立する歌詞は、彼ら自身が「Mr. Star Light」であることを証明しているかのようだ。
PICK IT UP
作詞:MORISHIN
作曲・編曲:Fredrik “Figge” Boström / Pontus Soderqvist
- 19thシングル
- フジテレビ系ドラマ「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」テーマソング
さすがシングル曲というインパクトの強さと、こういう音数の少ないEDMをシングルでやれるキスマイの強さが誇らしい。もうね、音が明らかに強いんだわ。
▼シングルリリース時に書いたレビュー
【Kis-My-Ft2】シングル「PICK IT UP」レビュー
Break The Chains
作詞:Komei Kobayashi
作曲:Andreas Öhrn / Komei Kobayashi
編曲:Andreas Öhrn
力強いギターとシンセの音の厚みが気持ちいいロックナンバー。直前の「PICK IT UP」とは逆に、これでもかというほど次から次に重なる音とボーカルパートがド派手で壮大でめちゃくちゃクールだ。ドンズバで好きなタイプの曲である。
Aメロの二階堂→横尾→宮田→千賀の骨太なラップに続く玉森始まりのBメロがえっっらい美しいんだけど、彼は荒野に降り立った大天使なのか…?彼が歩く後ろには緑が生い茂り花が咲き乱れ生命が息を吹き返す……(シシ神…?)とにかく玉森の色の明るい声がとても映える歌割である。
サビで合いの手のラップを入れるのが1番・大サビ→二階堂、2番→千賀なのもこの曲の大勝訴ポイントだ。二階堂のハスキーボイスは男の無骨さを強調するし、千賀のロイヤルボイスは力強さと同時に彩りのある華やかさをもたらす。
リリックは全く同じなのにそれぞれ違った印象になるからニカ千って本当によく出来たシンメである。
歌詞の内容としては、キスマイにとって“Chain”とは「繋がるもの」ではなく「壊すもの」であるというのをはっきりと示しているのが興味深い。(その片鱗は「赤い果実」の鎖ダンスですでにあったわけだが。)
こういう戦闘態勢の世界観がキスマイはよく似合う。
Toxxxic(藤ヶ谷太輔)
作詞・作曲:Kanata Okajima / Soma Genda
編曲:Soma Genda
- 通常盤のみ収録
ダークで激しいダンサブルな藤ヶ谷ソロ。本人が作詞するのが定例だが、今回は作家による歌詞で魅せる。
Kanata Okajima氏はHey! Say! JUMP「Magic Power」(作詞)、三浦大知、SHINee・超新星などのK-POP歌手、LDH系女性アーティストへの提供多数。Soma Genda氏は嵐「夜の影」の他Dream Ami・Q’ULLEなどのavex系への楽曲提供がある。
しばらく歌い上げるメロディックなソロ曲が続いていた藤ヶ谷。独特の女性目線の歌詞や甘く妖艶なボーカルワークには藤ヶ谷担でなくとも引き込まれる独特の魅力があるのだが、今回はタイトルの如く中毒的でパワー押しの曲をブチ込んできたのがそれはそれは見事である。
刺激的な歌詞ではあるが、描かれる男女の関係はあくまで1:1だ。第三者が入る余地もないほど没入していく様はどこかファンタジックでもある。
始めからガンガン愛に沈むのではなく、駆け引きしてみたり、女性側に「あなたじゃないとダメみたい」と言わせたるあたりも藤ヶ谷太輔の世界そのものだ。
サウンドや歌詞の雰囲気をさらに増長させるのが、甘さ控えめの力強いボーカルワークだ。Bメロに合いの手的に入る「ufufufu…」が印象的だが、それ以上に言及したいのが、語尾の母音が「o」の時に醸し出す媚薬なのか猛毒なのか判別できない中毒性だ。
「そう」「始めよう」「一層」(字面の母音はuだがoで発音されている)「一度」「やめてよ」「見えるの」「欲しいの」「叫びなよ」
媚薬に融かされるのもいいし、猛毒に冒されるのもそれはそれで本望じゃない…?やば、もうすでにCrazy Loveじゃん…。(墜ちた)
この曲を例えて言うなら白雪姫に出てくる毒リンゴとでも言っておこうか。Toxxxicだけに…。
蜃気楼
作詞:Ryohei Yamamoto
作曲:P3AK / Christofer Erixon
編曲:P3AK
Strings&Piano Arrangement:鈴木歌穂
重心低めのトロピカルハウスに、ストリングスのバッキングとサスティンの効いたピアノがドラマティックに華を添えるサウンドが、美しくも儚く切ない一曲。
前作「MUSIC COLOSSEUM」収録の「One Kiss」と系統を同じくする曲であるが、これは意図的に繋がりをもたせているなと確信するのが作詞が両曲ともRyohei Yamamoto氏によるものであるという点である。
“You come and go…”“Don’t go”などの印象的なフレーズを使いまわし、海をモチーフに二人の絶妙な距離感を描いた歌詞。「One Kiss」と「蜃気楼」の中の二人が同一だと見なして歌詞を読むと時間の経過を感じさせて切ないし、人物が同一ではないとしてもきっと同じビーチが物語の舞台なのだろうと思えてならない。
Eメジャー(ホ長調)であることも共通しておりサビの最高到達点がG#というのも同じであるが、「One Kiss」では1回のみに対して「蜃気楼」はこのHi G#を多様するため歌う分にはかなりキーが高く感じられる。さらに間奏明けのBメロではHi Aまで上がるが、ここを難なく地声で出せる藤ヶ谷に割り振っているのは大正解だと言えよう。
どのパートも蛍光ペンでぐりぐりハイライトしたいくらい良さが詰まりまくっている。
例えば2番Aメロ。二階堂のドライなハスキーボイスで紡がれる低音のメロディラインにはドキっとするし、その後に続く千賀の控えめかつウェットで艶っぽいボーカルの対比が美しい。
2番Bメロの横尾パート、これは今回のアルバムでダントツに推せる横尾ソロである。音域が中くらいで音階の動きが少ないというのもあるが、1番の藤ヶ谷、間奏明けの玉森ともまた違う憂いや色気を纏った4小節がそこに広がっている。
そして直後の宮田パートよ…!「アリガトウを伝える間も無く」は音に入るアタックは宮田らしく跳ね気味でありながら程よく抑えめ、「You come and go…」では感情を隠しきれず溢れさせるかのようなボーカルワークがとてつもなく素晴らしい。
ここも1番は藤ヶ谷が担当しているが、割と大人しめなので余計に2番の感情的な歌い回しが効いてくる。
私が死んだらこの宮田パートで出棺したいくらいにお気に入りである。(は?)
もう1点言及したいのが間奏明けBメロの玉森パート。玉森の真っ白で輝度の高い声質が存分に活かされている。前後の北山・藤ヶ谷の声質はどちらかと言うと暗さがあるタイプだが、そこに彼のパートが挟まることよって曲中のコントラストがはっきりするのが面白い。
キスマイ各メンバーの歌声を理解した上での歌割と、持ち味を引き出すレコーディングのディレクション。デビューから7年、スタッフとキスマイの双方がいい仕事をしていい作品を作り上げているのを実感させてくれた曲であった。
カ・ク・シ・ゴ・ト(北山宏光)
作詞・作曲:HusiQ.K
編曲:鈴木雅也
- 通常盤のみ収録
さあ、「国民の元カレ」の異名を持つ北山宏光のソロ曲が来ましたよ。(オタクが勝手に言い囃しているだけだが。)
今回も本人による作詞作曲。聴いた人を彼のオンナにしてしまう独特の北山ワールドが展開されている。
アルバム曲とは言え自作曲をコンスタントに発表し続けているその才能にシビレるし、他のアルバム収録曲の間に入っても浮かない絶妙さも見事だ。
90年代末期~00年代あたりのJ-POPを彷彿とさせるマイナー調のミディアムナンバーと歌詞に、北山の哀愁のある歌声がハマっている。妙にリアリティのある男女のストーリーを湿度高めに描くあたりにもしてやられた。
未練がましい男の話かと思いきや、別れた後もなんだかんだ逢瀬を繰り返してしまう男女の話なのがな…。「あいつが残るなら飲み干して」「カクシゴトをはじめよう」あたりから女性側にはもう別の彼がいることを匂わせていてそれでも「抱きしめたらすぐに また求めてしまう」んだから、もうけしからんのよ…。北山担生きてるーー?
そして最後に「雨」というワードが出てくるが、「雨」が何を指すかでずいぶん印象が変わってくる。文字通り気象の雨なのか、涙の隠喩なのか、それともまた別のものなのか。
「理性を濡らす雨は Who love…」のフレーズの捉え方にもよるので、聴いた人でそれぞれ解釈が異なりそうなところである。全てを描写するのではなく、こちらに解釈の余白を与えるあたりも何枚も上手を取られた気分だ。
セルフィー
作詞:Atsushi Shimada
作曲:小松清人 / 川口進
編曲:井上慎二郎
スチールパンの軽快なメロディーとアコースティックなサウンドでイントロからグッと心を掴まれるサマーソング。こういう爽やかで気持ちいい曲もちゃんと入れてくるのがキスマイなのである。
爽やかだけでなく夏の暑さや潮の香りを感じさせる世界観、サビ頭の「Let’s get summer」のキャッチーさ、2番Aメロの夕日のくだりを玉森に割り振っている絶妙さなど言及したい箇所はいくつもあるが、この曲の絶賛ポイントは何と言っても1番Aメロの歌い出しが宮田という点である。
キスマイ楽曲で宮田歌い出しというのはかなりレアだが(そもそも今まであったっけ…?)、これは絶対舞祭組アルバムの「最幸LOVE!」と「Fire&Lightning」で味をしめたスタッフがいるに違いない…サンキューエイベ!
「セルフィー」の宮田歌い出しの何がいいって、音符をしっかり掴み取る音取りをしたかと思えば、「あの空へと」で急に甘く優しい宮田俊哉が顔を見せるところなんだよ…!ここだけで淡い青春を感じさせるのなんなん!!めっちゃ好きなやつだわ…。
2番では玉森がAメロ担当だが宮田ほど色付けして歌ってないところを見ると、やはり宮田のボーカルワークの秀逸さを褒めずにはいられない。としくん天才かよ…。
間奏明けCメロのユニゾンがうまく聴き取れないのだが、それにしても「移りゆく~」は二階堂の、「キミとの~」は宮田の声が強調されたミキシングになっている。君らは誰と歌っているんだい?おじさんに教えてごらん??
青春Don’t Stop!!
作詞:MiNE
作曲:川口進 / MiNE / Atsushi Shimada
編曲:生田真心
J-POPど真ん中のアッパーチューンに、アラサーだからこそ歌えるアツい「青春」を詰め込んだ歌詞が同世代的に染みる。
こういう曲こそが「平成歌謡曲」(J-POPの中でもより歌謡曲の要素を持つ曲)としての系譜を持つのだろうが、それって昭和生まれと平成生まれが混在しているグループだからこそエッセンスを汲み取りながら実感を持って2018年に歌い届けることができるのかな、と思う。
修二と彰「青春アミーゴ」や山下智久「抱いてセニョリータ」のような歌謡曲テイストの曲にリアルタイムでバックに付いていたことや、北山が折に触れてキスマイを「部活」と例えることを、この「青春Don’t Stop!!」を聴く上で頭に入れておくとより一層味わい深く楽しめるだろう。
総評の項でも触れたが、この曲から爆誕した「死ぬまで成長期」はキスマイを表すコピーとして一生使いたいパワーワードである。
Super Tasty!
作詞:Funk Uchino
作曲:Stephan Elfgren / Carlos Okabe
編曲:鈴木雅也
ザ・エイベックスなシンセサウンドにブチ上がる、アルバム「Yummy!!」のコアソング。この曲でMステ・CDTVに出演しているので、実質アルバムのリードソングであると言えるだろう。
作詞のFunk Uchino・作曲のCarlos Okabeの両氏は舞祭組「ぶっさっさー」を手がけたコンビ。Carlos Okabe氏は他にもKis-My-Ft2「Brand New World」玉森裕太「Only One…」、他グループだとSexy Zone「プンププンプン」を提供。(この「プンププンプン」はK-POP女子ドル風の味わいがあるので是非聴いてほしい一曲。)
もうひとりの作曲者Stephan Elfgren氏はCarlos Okabe氏と共作の「Brand New World」の他、「いいね!」「Dancing Star」「Rocking Party」を手がけている。登板回数は少ないものの、毎回インパクトのある楽曲を提供している。
さて、この曲もキスマイの人数である“7”を意識させる歌詞が織り込まれている。また。「Super Tasty!」のタイトルにもあるように食べ物に関するワードも出てくる。まさに「おいしい」曲となっている。
1番Bメロ「ショートケーキならイチゴとクリーム 足りないモノを補ってWin Win」を宮玉、2番「ハンバーガーみたくバンズとミートが 合わさって初めてクリティカルヒット」をニカ千で歌わせている采配がどう考えても天才すぎる。
まるで彼ら自身のことを表したかのようなフレーズなのだが、宮玉は補う関係でニカ千が合わさる関係って言い得て妙にも程がある…。
落ちサビでC&Rさせてラスサビ以降を大盛り上がりのお祭りソングに化かす構成も、ライブで盛り上がること必至だ。
Clap-A-Holics(玉森裕太)
作詞:SUNNY BOY
作曲:STEVEN LEE / Xisco / Drew Ryan Scott
編曲:Xisco
- 通常盤のみ収録
みんな大好きSTEVEN LEE氏に、彼との共作でお馴染みDrew Ryan Scott氏、Sexy Zone「Fantasy~1秒の奇跡~」やHey!Say!7 「Sweet Liar」などを手掛けるXisco氏、キスマイ楽曲常連の川口進氏の四名による、ゴリゴリのEDMと高低差の激しいメロディラインが魅せるブチ上げ不可避の玉森ソロ。
作詞は、同じくEDMの色濃い玉森ソロ「ALIVE」と同じSUNNY BOY氏である。
ジャニーズのソロ曲でここまで振り切ってEDM路線をやれる玉森裕太の強さを見せつけられる楽曲。ダンスミュージックに強いavexにいるからこそここまでエッジの効いた曲をやれるのであって、キスマイの所属レーベルがavexであることへの感謝を禁じ得ない。(10000000回目)
EDMのゴリゴリ感に加えてサックスの下世話なフックがアゲアゲ感を加速する。この印象的なサックスの使い方をしている曲といえば有名どころだとAriana Grande「Problem ft. Iggy Azalea」がある。
そして高低差の激しいボーカルのメロディライン。BメロとCメロ同一人物なのマジかよ…?変幻自在の歌声が次から次に繰り出されるのを前に、私はもう諸手を挙げてひれ伏すしかない。「Rock your body」の時の音の落とし方が素晴らしいしアレは女を落としまくる玉森裕太だわ。
ブチ上がるトラックや歌唱のクールさの一方、歌詞はとにかく朝まで踊りまくるだけで恋愛の云々が語られないのが意外な感じがした。藤ヶ谷・北山のソロが濃いストーリーであるとの対比が面白い。
ああ、朝までput your hands upして永遠に体を揺らし続けたい…。
FREEZE
作詞:MIYAVI / JUN
作曲:MIYAVI / Lenard Skolnik
編曲:MIYAVI / Yung Spielburg
キスマイの代表曲の一つ「FIRE BEAT」の対になる曲として制作された、ギタリストMIYAVI氏による提供曲。
MIYAVIの重厚なギターのサウンドの中で、キスマイが徐々にエンジンをかけ、サビで強靭さのあるロックナンバーに熱く燃え上がるところに終始魂が震える。もうとにかくトラックがカッコいい。
近年のJ-POPには珍しく、長尺のギターソロが入っているのも聴きどころの一つだ。語彙力なさすぎるんだけどめちゃくちゃカッコいいんだこれが…。
サビの「刺激的でNICE ダイヤモンドICE」で横尾をフィーチャーしているのだが、箇所によってソロだったりユニゾンだったりするが、どうあがいても隠しきれない帝王感があるのが無理…。ライブで確実に燃やし尽くされるか極寒のICEで刺されるかのどっちかじゃん。心臓持つかな……。
「FIRE BEAT」の対極として作ったらこの曲になったというのはなるほどね~という感じなので、あとはどんな振付でどんな演出で魅せてくれるか。かなり期待のハードルが上がっているが、それを超えてくるのが楽しみである。
赤い果実
作詞:Litz
作曲:HIKARI / 原田峻輔
作曲:CHOKKAKU
- 20thシングル
- テレビ朝日系金曜ナイトドラマ「重要参考人探偵」主題歌
ここに「赤い果実」入るの、そうだよね~ここだよね~~と納得の位置である。「Yummy!!」の「闇」の部分をシングル曲に担わせることで、キスマイ楽曲の幅の広さを改めて思い知らされる。
▼シングルリリース時に書いたレビュー
REAL ME(北山宏光&藤ヶ谷太輔)
作詞:大沢圭一
作曲:朴優尊
編曲:CHOKKAKU
北山・藤ヶ谷の通算第5弾のユニット曲は暑苦しいほどハードなロックナンバー。
作詞の大沢圭一氏は声優や女性アイドルへの提供多数、作曲の朴優尊氏はAKB48・SKE48やK-POP男性グループへの提供曲がある。
イントロの感じが今井翼「Never Ever」っぽく感じたのだが、00年代を彷彿とさせる音の作りによるものだろう。
サビの「絡ませて」「汗と汗でもうベトベト」「ガチでマジ」がとにかくキャッチーだし、とにかく暑苦しい。この暑苦しさこそが藤北なのであって、そこにつけ入るすきなど無いのである。
だからこの曲に関して何を書いても輪郭がつかめずにボヤッとしてしまう。それはもう“Don’t think, feel.”の世界なのだ。
私からはとにかく曲を聴いてくれ、そしてそこに在る藤北を感じてくれ…!としか言えないのである…。
友+情 を、くっつけて
作詞:鈴木おさむ
作曲・編曲:福岡良太
一度は離れてしまった友情を思い返したり、現実に落ち込んだりしながら前向きに歩むことをしっとりしたミディアムバラードに乗せて歌った楽曲。
鈴木おさむ氏は「Thank youじゃん!」以来の歌詞提供。作曲の福岡良太氏は舞祭組「俺とヒーロー」のバラードが記憶に新しい。
タイトル表記の遊び心はもちろん、サビでも「You joint I joint」を友情・愛情と読ませたりと思わずクスッとしてしまう仕掛けがなんともかわいらしい。
この曲でも“7”をモチーフにした歌詞が入っている。他の曲がキスマイでないと成立しないものであるのに比べ、「7つの夢」「Seven Hearts」と控えめな主張である。
曲だけ聴くとそうでもないが、特典映像「キスマツ荘~キスマイ7年目の仲直り大作戦~」の終盤のタイミングで流れるとやたら感情を揺さぶられたので、この曲がピンとこないな~と思ったらキスマツ荘を見てほしい。最悪初回Bに収録の後編だけでいいから。…いや、やっぱ前編も見て。笑
HAPPY☆DAY
作詞:KOMU
作曲:Benny Jansson / Kevin Borg
編曲:h-wonder
いきなりセリフから始まったもんだからアイドルトンチキソング来た…?と思いきや、ウッドベース・サックス・シロフォンが出てくるムードのあるオールディーズ風のサウンドに驚いた。
そこそこキャリアを積んできて年齢も重ねてきたジャニーズはだいたい大人っぽいジャズを1曲やりだすものだが、そうか、キスマイはオールディーズに振ってきたかという意外性。しかも明るく楽しいハッピーソングに仕上げているので湿っぽくないのもいい。
2018年にこの手の曲を歌っても浮かないのは、ラップを間に挟んで今風に落とし込んでいるからだろう。この辺のさじ加減がまた絶妙なのだ。
1番のAメロBメロはKis-My-Ft2のイニシャル順にソロパートが繋がっていく。そのためサビの直前を歌うのが二階堂なのだが、輪をかけて声がハスキーかつ甘く優しいのがたまらない。パワーで押すラップに定評がある彼だが、こういうメロパートでもしっかり印象に残る声の持ち主なのである。
この曲の特徴はサビ終わりのファルセットだろう。気持ちよくて思わず一緒に「フウッフ~」と口ずさみたくなるのが楽しい。
あと最初の宮田のセリフ「愛してるー!」にはタイミングとか声色的にもSexy Zoneの「Sexy Summerに雪が降る」におけるマリウスの「I miss you」に通じる何かがある気がするんだ…。
We are キスマイ!
作詞:ケリー
作曲:Fredrik “Figge” Boström
編曲:Fredrik “Figge” Boström / ha-j
- 通常盤ボーナストラック
「Kis-My-Calling」以来の自己紹介ソング。キスマイはコーリングを一生使っていくものだと思っていたので、この7作目のアルバムで自己紹介曲を新たに制作するのは意外だった。
作詞は「全力ファイター」「いいね!」「ズッキューン」、今回のアルバムでは「Invitation」も提供しているケリー氏、作曲は「I Scream Night」「Tonight」「EXPLODE」「PICK IT UP」等のFredrik “Figge” Boström氏。そして編曲にはha-j氏。完全勝訴の布陣である。
個性大爆発・キャラの渋滞が激しいキスマイの自己紹介ソングの最適解として、アメリカンテイストなディズニーランドのアトラクションみのある楽曲を持ってきてるのが大正解としか言いようがない。そうか、キスマイはアトラクションだったのか。(と、ここまで書いて「Kis-My-LAND」を思い出す)
そして歌詞は、愛あるディスり?もありつつキスマイ各人のキャラクターが反映されていたり、ライブでファンとC&Rする前提で書かれている。
歌詞を見ながら曲を聴くとめっちゃ楽しいし、思わずプッと吹き出してしまうほど笑えるんだなこれが。それゆえに電車の中で何となく聴くのはキケンだから気をつけてほしい。私は「チャラ男にオネエに~」のセクションで吹いてしまい、周りに変な目で見られた経験アリだから…。
そういう笑えるところもありつつ、ちゃんと刺さるフレーズを入れてくるのもケリー氏の歌詞のスゴイところだ。
- “ジャニーズなのに”そんな声も 今では褒め言葉
- 時代のペースメーカー トップを取る
- もうなんでもやります!俺たち(Kis-My-Ft2!!)
アルバム買ってきて1周目聴いて、この曲が終わった後思わず立ち上がって拍手してしまったもんね。
ブラホー!ワンダフォー!!ヤミーーー!!!!!!!
おわりに
全18曲、どの曲にもおいしさを感じる、アルバムタイトル通り“Yummy!!”なアルバムに仕上がった。
このアルバムを携えての全国5大ドームツアー(名古屋・福岡・東京・大阪・西武)が5月5日からスタートする。
いったいどんな“オイシイ”コンサートになるのか、こちらも楽しみである。
▼カテゴリ:Kis-My-Ft2 の記事一覧
Kis-My-Ft2 カテゴリーの記事一覧 – みやまみゅーじっく