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【King & Prince】シングル「シンデレラガール」レビュー

King & Prince
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ジャニーズの6人組グループKing & Princeが2018年5月23日、満を持して「シンデレラガール」でデビューを飾った。

ジャニーズ新グループのデビューは2014年のジャニーズWEST以来4年ぶり。それだけにJr.ファンのみならず、デビュー組のファンからも高い注目を集めている。

フラゲ日2018年5月22日付のオリコンデイリーシングルランキングでは、店着初日にも関わらず31.8万枚を記録し、週間では57.7万枚という驚異的な売上を記録した。この数字はデビュー曲ではKAT-TUN「Real Face」に次ぐものである。そう、ジャニーズのデビューというのは一種の祭りなのだ。

 

 

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総評

ジャニーズのデビュー曲が持つ意味

デビュー曲はキャリアのスタートとなるためどのアーティストにとっても大切なものである。とりわけジャニーズのグループ(ユニット)にとってのデビュー曲はまたひときわ特別な意味を持つ。

ジャニーズJr.としてデビュー組のバックで踊ったり、舞台に出演したり、時には自分たちがメインとなるコンサートを開いたりして経験を積んでいくわけだが、世間一般にはデビューをもって初顔見せとなる。

その名刺代わりの一曲として披露するのがデビュー曲であり、曲のパフォーマンスをすることでグループを認知してもらわなければならない。デビュー年はもちろん、その後も代表曲として歌い続けることになるため、これからどんなグループとして打ち出していこうとしているのかを感じさせる必要がある。単にフレッシュさをアピールするだけでは不十分なのである。

楽曲としての高いクオリティと一発で耳に残るフレーズが不可欠なのだが、ジャニーズのデビュー曲はその多くがサビ始まりである。歌番組に出演の際、サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→落ちサビ→ラスサビの構成で披露すれば、サビのメロディが4回も出てくるわけで、これだけで刷り込み効果を期待できる。そのためこれまでのデビュー曲にもサビ始まりが多く採用されてきた。TOKIO「LOVE YOU ONLY」、NEWS「NEWSニッポン」、関ジャニ∞「浪花いろは節」、KAT-TUN「Real Face」、Kis-My-Ft2「Everybody Go」がサビ始まりのデビュー曲である。

また、サビ始まりでなくても「サビだけ歌う」パターンもあることから、サビにキャッチーなフレーズを入れ込むことが必須となる。全てではないが一例を挙げてみよう。

  • Stay with me 硝子の少年時代の破片が胸へと突き刺さる
  • 巻き起こせA・RA・SHI A・RA・SHI for Dream
  • ギリギリでいつも生きていたいから
  • Jumping to my dream
  • この時代のチャンピオンさぁ 掴め1
  • 時代を創ろう Sexy Zone
  • 時を超え5 stars
  • ええじゃないか!ええじゃないか!

デビュー年が接近しているKis-My-Ft2・Sexy Zone・A.B.C-Zが揃って時代とか時というワードが出てきているのが興味深い。この辺に言及し始めたら長くなるので今回はやめておくが、デビュー曲はそれだけグループの精神性を反映し支柱となっていくものなのである。

今回レビューするKing & Princeのデビュー曲「シンデレラガール」は、

  • 君はシンデレラガール My precious one

がサビ頭であるが、象徴的なフレーズにおいて自分自身のことを歌っていない。これはとても興味深い点である。

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外部レーベル所属の期待値

King & PrinceはユニバーサルJに新しく設立されたJohnnys’ Universeが所属レーベル。J StormでもJohnny’s Entertainmentでもなく、わざわざ外部にJohnnysの名を冠したレーベルを立ち上げるのだから力の入れ具合が尋常じゃないのがうかがえる。

外部レーベルに所属するメリットとして、レコード会社の持つ人脈や音楽性を取り入れた楽曲制作ができるというのがある。ユニバーサルといえば、福山雅治やスピッツ、Perfume、田口淳之介をはじめ、K-POPアーティストやロックバンドも多く所属している。

ポップスもテクノもロックもなんでもやれる土壌があるのは、今後のKing & Princeの音楽性を探っていく上でも可能性が広がっているということでもある。この点、ジャニーズの楽曲厨としては期待値が爆上がりである。

 

前置きが長くなったが、ここからは通常盤に収録されている3曲の楽曲をレビューしていく。

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楽曲レビュー

シンデレラガール

作詞:河田総一郎、作曲:河田総一郎・佐々木望、編曲:船山基紀

TBS系ドラマ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』主題歌

 

作詞・作曲は、欅坂46「二人セゾン」、遊助「一笑懸命」ほか、乃木坂46やLittle Glee Monsterなどへの楽曲提供を手がける河田総一郎・佐々木望の両氏。

編曲は日本の編曲界の大御所である船山基紀氏。船山基紀という名前でなんとなく見たことあるな…という方もいるかもしれないが、古くは沢田研二「勝手にしやがれ」・C-C-B「ロマンティックが止まらない」などの大ヒット曲をはじめ、ジャニーズでも少年隊「仮面舞踏会」、TOKIO「AMBITIOUS JAPAN!」、KinKi Kids「ジェットコースター・ロマンス」など、日本の音楽シーンの歴史を飾る楽曲を手がけてきたレジェンド級の編曲家である。

もうこのクレジットだけでデビュー曲がいかに本気を出して制作されているかがおわかりいただけるだろう。

「君はシンデレラガール My precious one」の印象的なフレーズのサビで始まる「シンデレラガール」。5月のデビューにふさわしい春の爽やかさとフレッシュなきらめきを感じさせるサウンドは、まさにKing & Princeの門出を祝福しているかのようだ。

初めて聴いたときはその爽やかさときらめきのあまり、ジャニーズのデビュー曲にしてはパンチが足りない…もっとエグみを、トンチキをくれ……と消化不良だったのだが、そもそもKing & Princeはその名の通り王様と王子様という絵本の世界から出てきたようなコンセプトなのだから、エグみやトンチキを前に押し出す必要はないのである。

随所に散りばめられたウインドチャイムや鐘の音、ストリングスの伸ばしやピチカート。重ねに重ねた音色は一歩間違えれば過剰に感じて食傷気味になってしまうのだが、うまいこと丸く収まっていてなんとも耳が気持ちいい。このくらいわかりやすく圧をかけるくらいのキラキラサウンドのほうが、ほんの数秒聴いただけでも耳を引きつけやすい。 

先にも述べたが、自分自身のことよりも「シンデレラガール」である「君」のことを全面に押し出した歌詞は、近年のジャニーズのデビュー曲としては異色の存在だ。2010年代にデビューした4組(Kis-My-Ft2・Sexy Zone・A.B.C-Z・ジャニーズWEST)は上を目指すとか時代をどうこうするという野心を感じさせ、自分たち自身へ向けたアンセムのような意味合いがあったが、2018年の今打ち出されるのが王道のキラキラポップスかつ「君」にかかる配分がこんなに大きいのは興味深い傾向である。

ジャニーズらしくないのをアイデンティティとする流れから、本来のジャニーズとは何なのか?を再定義するようなファンタジーな王子様路線。そういう背景を踏まえて作られたのを知っても知らなくても、楽曲そのものが評価されて話題になり売れているというのだから時代が求める男性アイドルのイメージにうまく乗ることができているのだろう。

「シンデレラガール」は平野のソロパートから始まり、随所にメンバーのソロパートがある。グループに一人は特徴的な声がいたり歌が不得手なメンバーがいたりするものだが、Bメロの畳み掛けられるソロパートのつながりがなめらかで驚いた。これだけ全員が全員、歌に難がないのもなかなかない。ポテンシャル高すぎでは…(震え)。

ただ、私は強欲なオタクなので「えっ???」と立ち止まってしまうエグ味というか雑味のある歌声をどうしても求めてしまうのだが、そういうのに疲れてしまった時に脳が求めるのは歌声の平均値の高さを感じられる曲。King & Princeの「シンデレラガール」はまさにこれだろう。ジャニーズだからとか王子様路線だからと言う理由で嫌煙している人がいたら無理やり口に突っ込んで食わせたい。案外悪くないでしょ?そうでしょ?いいでしょ?

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Funk it up

作詞:Komei Kobayashi、作曲:Susumu Kawaguchi・Fredrik”Figge”Bostrom、編曲︰CHOKKAKU

 

「シンデレラガール」とは打って変わって、こちらの「Funk it up」はタイトル通りファンクテイストを取り入れたダンスナンバー。ゴリゴリのファンクと言うよりは、嵐がやっているようなポップスとの間を取ったまろやかで聴きやすいサウンドである。

作詞のKomei Kobayashi氏はKis-My-Ft2「Shake It Up」「レッツゴー!!」、Sexy Zone「バイバイ Du バイ~See you again~」「Slow Jam」、ジャニーズWEST「PARTY MANIACS」など若手ジャニーズへの提供多数。

作曲のSusumu Kawaguchi氏・Fredrik”Figge”Bostrom氏のコンビではV6「BEAT OF LIFE」、嵐「伝えたいこと」「Starlight kiss」、Sexy Zone「We Gotta Go」など。両氏は各々でも多くの楽曲をジャニーズの各グループに提供している。

編曲はジャニーズ御用達のCHOKKAKU氏。あまりに多すぎるので興味のある方はJASRACのデータベースを参照されたい。

タイトルでもあり曲中でも何回も出てくる「Funk it up」というフレーズ。もともとfunk upというのは、退屈な雰囲気の中で気分を上げていこうという気持ちのことを指す。参照:Urban Dictionary: Funk It Up

フロアで踊ろうぜ!パーティーで体揺らそうぜ!っていう曲なのだが、ずいぶん健全な雰囲気に仕上がっている。これもキンプリが醸す色なのだろう。アラサー目線で言うと、ハタチそこそこの男の子がちょっと背伸びして大人ぶってるように感じられてかわいいな~と思うのだが、こういう曲は年齢を増すほどに色香を増して魅力的になっていくので長く歌い継いでほしい。そして彼らがアラサーになるころに歌い踊っているのを見たいと思わせてくれる、とても未来を感じる楽曲である。

 

YOU, WANTED!

作詞:RUCCA、作曲:Tommy Clint・Christofer Erixon、編曲:Tommy Clint・ha-j

通常盤のみ収録。

 

重低音が効いた疾走感のあるサウンドにメロディアスなボーカルラインが気持ちいいEDMナンバー。

作詞のRUCCA氏は、嵐「Doors~勇気の軌跡~」、KAT-TUN「楔-kusabi-」他、蒼井翔太や下野紘など声優へ歌詞提供。

作曲のTommy Clint氏はHey!Say!JUMP「Beat Line」、Kis-My-Ft2「Shake It Up」「Tonight」、A.B.C-Z「Za ABC~5stars~」など、Christofer Erixon氏はHey!Say!JUMP「Give Me Love」、Kis-My-Ft2「Gravity」、ジャニーズWEST「Climinal」など重厚でダンサブルな楽曲に定評がある。

編曲のha-j氏はKinKi Kids・嵐・山下智久・関ジャニ∞・Kis-My-Ft2など多くのジャニーズ楽曲の作曲・編曲に携わっている。

「シンデレラガール」収録曲全てに言えることだが、楽曲提供のクレジットだけでかなり豪華なメンツで、Jストとavexのいいとこ取りみたいなおいしさがある。

「YOU, WANTED!」はダークな世界観の中で“GIRL”を求めるドラマチックな歌詞なのだが、個人的には「シンデレラガール」のサイドストーリーのような感じも受ける。同じ世界線の中にありながら対比として描かれる2組の男女の恋愛模様は、どちらもどこか現実離れしたファンタジックさがある。キンプリを絵本から飛び出してきた男の子たちとして描きたくなるのは、売り出す方の大人たちも同じなのだな…。

この曲を聴いていて、デビュー当時の錦戸亮のような歌声がいてちょっとビックリした。1番サビ前の「痺れ切らし さあ走り出すぜ 指図はいらない」とか、ラスサビの「すべてを染め変えて」とかさ、まさに2003~2004年あたりの錦戸亮じゃない??悲しいことにKing & Princeの一人ひとりの声の聞き分けがまだできないので、該当部分の歌割が誰なのかわかる方がいたら教えてほしい…。

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おわりに

3曲聴いてみて思うのが、歌唱力の平均値がべらぼうに高いということだ。これは圧倒的強みである。それに所属レーベルがユニバーサルということもあり、楽曲の振り幅を大きく取れるのもアドバンテージだ。

華々しいデビューを飾ったKing & Princeがどんな楽曲を聴かせてくれるのか、今後の活躍を大いに期待したい。

 

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